トヨクモ株式会社
トヨクモ株式会社は、クラウド型安否確認システム「安否確認サービス2」にてTwilio SendGridを活用しています。同社取締役 田里友彦氏、マーケティング担当 中井康喜氏、エンジニア 江口秀太氏にSendGrid活用の上での工夫、導入効果などについて伺いました。
トヨクモ株式会社について
2010年にサイボウズスタートアップス株式会社として設立。2019年にトヨクモ株式会社に社名を変更し、2020年にマザーズ市場(現グロース市場)へ上場。2016年に提供を開始した「安否確認サービス2」の契約数は2022年9月1日時点で3,000件を突破し、150万以上のユーザが利用しています。その他にも「kintone連携サービス」「トヨクモ スケジューラー」を展開。ITの専門的な知識の有無に関係なく、誰もが簡単に業務を効率化できるシンプルなクラウドサービスを提供しています。
安否確認サービス2について
安否確認サービス2は、企業・団体の管理者(BCP担当者など)が、災害時に自社の従業員の安否情報を確認するためのサービスです。災害時には安否確認メールが自動配信されます。各従業員がそれに回答することで安否情報が分かるようになっています。配信対象とする災害種別や規模は、管理者による設定が可能です。
安否確認メールの一斉配信にはSendGridのWeb APIが使われています。
SendGridを選んだ理由は「スケールのしやすさ」「配信スピード」
– 安否確認サービス2にSendGridを導入した経緯を教えてください。
以前は、主にキャリアメールの到達率を向上させる目的で他社のサービスを利用していたのですが、大量配信時に大規模な遅延が発生するなど処理速度に関する課題がありました。また、送信通数が増えると利用料が割高になる料金体系でした。
ビジネスがスケールするにしたがって、このような課題が深刻さを増してきたため、他サービスの利用検討を始め、2018年にSendGridに切り替えました。
– 様々なメール配信サービスがある中でSendGridを選んだ理由とは?
SendGridはビジネススケールに合わせて柔軟にプランを選択できますし、もしプランの上限通数を超えてしまってもメール送信が止まることはありません。一斉配信のたびに送信通数を気にする必要がないところが非常に魅力的に感じました。
また、配信処理能力が高い、ということも決め手のひとつでしたね。SendGridなら弊社の大量配信にも十分に対応できると考え、SendGridを選びました。
大規模クラウドリソース+SendGridで短時間での大量配信を実現
– 安否確認メールは一度に何通程度配信しているのでしょうか?またメール到達までの時間はどの程度でしょうか?
安否確認サービス2では、年に1度、防災の日(9月1日)に希望ユーザに向けて一斉訓練メールを配信しています。その際は60万通程度のメールを5分ほどで配信しました。
– かなりの短時間で大量配信を実現していますね。具体的にどのように処理しているのでしょうか?
安否確認サービス2では地震速報が気象庁から発表されると、自動的にクラウドリソースを拡張しています。データベースに保存されている宛先情報からSendGridへの送信リクエストを作成し、大規模なクラウドリソースで並列処理することで、リクエストの迅速な処理を実現しています。
また、BCP対策としてサーバをシンガポールに配置していることも高速処理に寄与していると思います。SendGridのAPIエンドポイントもシンガポールにあるようで、レイテンシーがとても低くなっています。
送信リクエストが届きさえすればあとはSendGrid側で高速に処理してもらえるという安心感があるので、送信リクエストをいかに処理するか、ということに注力できました。
メール到達率を高める「仕組みづくり」
– メールの大量配信には高いレピュテーションが必要です。レピュテーションを高めるためにはIPウォームアップが必須で、また高い状態を維持するためには同程度のボリュームの送信を継続する必要もあります。安否確認システムのような突発的な大量配信では、不達や遅延といった課題が多く発生するため、弊社サポートではそういった用途での利用は実は推奨しておりません。送信しない時間が長くなると無効なメールアドレスが増加し、レピュテーションが低下する恐れもあるように思います。この辺りはどのように対策されているのでしょうか?
メンテナンス通知という名目で、定期的にメールを配信する機能を実装しました。デフォルトで月一回配信されるので、レピュテーションを維持することができます。
また、配信時にバウンス(届かないメールアドレス)を検出することができるようになっています。バウンスが発生した際はエラーメッセージを表示し、管理者が原因を調べられるようにしました。Event Webhookの内容をそのまま表示するのではなく、ユーザにわかりやすいようにカスタマイズしています。各エラーメッセージへの対処法についてもドキュメント化し、お客様自身で問題を解決できるようにしました。
災害時のメール配信完了までに要した時間を公開しているとおり、これまで大幅な遅延が発生したことはないので、レピュテーションは高く維持できていると思います。また、前述の一斉訓練時のバウンス率は0.67%でした。配信毎に送信する宛先が異なるので、バラつきは当然ありますが、概ねこの程度の値を維持できています。
– 配信実績の公開はなかなかできないことかと思います。また、バウンス率もかなり低く抑えられていますね。ドキュメントを整備しているとのことでしたが、具体的にどのような内容が記載されているのでしょうか。
基本的にはシステム上での操作方法を記載していますが、エラー内容によっては、それ以外の対処法についても記載しています。
SendGridではハードバウンスによりメールが不達となった場合、バウンスリストに掲載し、それ以降の送信リクエストは自動的に破棄されますよね。安否確認サービス2も同じ仕組みを採用しているので不用意にバウンス率が上昇することはありません。一方で、実際には届けることができる宛先で意図せずハードバウンスが発生した場合に再送できなくなってしまうため、「メールアドレスの再確認」「受信フィルタの設定」などの根本原因の究明、解消手順をドキュメントに記載しています。
また、ドキュメントを読んでも問題が解決しないユーザには、専用のサポート窓口にお問い合わせいただいています。通常は安否確認サービス2の使い方全般に関するサポートを行っていますが、メールの不達に関するお問い合わせについてもサポートチームから回答できるよう、対応マニュアルなどを整備しています。
– 「機能」「ドキュメント」「サポート」を提供して、ユーザ自身で環境を整備する「仕組み」を作られているのですね。こうした仕組みを実際に活用してもらうための工夫があれば教えてください。
前述の一斉訓練の実施後には、参加いただいた企業全体の平均回答率等を公開しています。また、企業全体平均値との比較レポートも個別に提供しているので、自社の値が相対的に低い場合は、従業員への協力を要請するモチベーションになると思います。いざという時に安否が確認できないということは、管理者にとっても重大な問題ですから。
– 非常に困難とされる安否確認メールの配信を、仕組みづくりによって、見事に実現されていることがわかりました。仕組みを作るにあたって、苦労した点があればお聞かせください。
色々苦労した点はありますが、何よりもまずメールの特性を知る必要がありました。正直、送信リクエストをどう処理するかより、「メールの到達率を上げる」ための方法を理解することの方が大変でしたが、その際に御社のドキュメントやブログが非常に参考になりました。また、不明点を御社のサポートに問い合わせた際には、非常に有意義な内容をご教示いただき、大変助かりました。
「安定性」「利便性の高さ」がSendGridの魅力
– SendGrid導入後の効果や評価についてお聞かせください。
まずはとにかくトラブルがなく、メールがちゃんと届くことが何よりも大きな魅力だと思います。一般的にキャリアメールなどは受信制限が厳しいとされているかと思いますが、特定のドメインに届きにくいということも特にありませんでした。安否確認サービス2は一般企業の他に地方自治体にも導入いただいておりますが、自治体のドメイン(lgドメイン)に対しても問題なくメールを送れています。
また、大量配信時の処理速度にも満足しています。大規模災害発生時には通信トラフィックが30分程度でピークを迎えるため、安否確認メールはそれまでに受信者に届ける必要があります。安否確認サービス2では、誤報判定のため災害発生後10分間待ってから自動一斉配信を開始するので、実質20分で配信を完了する必要があるのですが、直近3年半の災害発生に伴う大規模一斉配信(96件)で、完了までに20分かかったことは一度もありません。
SendGridは開発の観点から見ても非常に利便性が高いと思っています。APIの種類が非常に豊富で、かつ、各APIを呼び出すだけで処理を実行できるので、欲しい機能を迅速に実装することができます。また、他サービスではバウンスに対する処理は自身で行わなければならないものもある中で、SendGridではバウンスリストに入った宛先への送信リクエストを自動で破棄してくれるなど、レピュテーションを高めるための仕組みがはじめから備わっているので、開発に集中できました。
– 最後に、SendGridへのご要望についてお聞かせください。
機能的な要望は特にありません。現在、安否確認サービス2以外のサービスでもSendGridの利用を拡大しているところですので、このまま安定した利便性の高いサービスをご提供いただければと思います。
※記載されている会社名、製品名等は一般に各社の登録商標または商標です。
※掲載内容はすべて取材当時のものです。
取材:2022年12月
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