IPレピュテーションとは?
- 2021年9月14日
- by 吉田 健人
- Category: ベストプラクティス
迷惑メールフォルダに振り分けられないようにしたい、遅延を発生させずに一斉送信したい、といった課題があるなら、「IPレピュテーション」について知っておくことが大切です。一般的には馴染みが薄いこの概念について、詳しく紹介します。
迷惑メールとの闘い
メールの歴史は、どうにか受信者にスパムメールを届けようとする悪質な業者と、少しでも受信トレイをクリーンに保ちたいというISP(インターネットサービスプロバイダ)の闘いの歴史と言っても過言ではありません。今日では、ISPは届くメールをくまなくチェックし、スパムの特徴にあてはまるとすぐさまブロックされます。チェックする項目は、例えば以下のような観点です。
- ドメインの設定
送信されたメールに、送信ドメイン認証がきちんと設定されているか? - 迷惑メール報告数
この送信者のメールは、受信者からどれぐらい迷惑メール報告を受けているか? - バウンス数
この送信者のメールは、正当な宛先に対して送信されているか?(長く使われていない宛先や存在しない宛先に送信していると、スパム送信とみなされる) - 受信者のポジティブな反応
この送信者のメールは、受信者に開封されたりリンクがクリックされたりしているか?
「IPレピュテーション」は、以上のような観点から「送信者を評価する」システムの一つです。
送信者の評価
「送信者を評価する」と言っても、メールの場合、送信を行っている実際の人物を評価するわけではありません。実際にメール送信をしているのは人ではなくメールサーバなので、メールサーバ(IPアドレス)ごとに、その送信の振る舞いがスコアリングされています。これが、IPレピュテーションです。
イメージを上の図に示しました。IPレピュテーションを決定しているのは各ISPや外部の第三者機関です。受信側は、メールの送信元IPアドレスのIPレピュテーションを確認し、受信可否を決めています。図中では、大手ISPのA社は自身が算出したIPレピュテーションを、B社は第三者機関が算出したIPレピュテーションを参照しています。このように、IPアドレスの評価は宛先ごとに異なる可能性があります。
図中の送信者は2つのIPアドレスを用いてメールを送っています。左側のメールサーバ(192.0.2.0)はIPレピュテーションが高いため問題なくメールが受信されています。しかし、右側のメールサーバ(203.0.113.0)のようにIPレピュテーションが低いと、受信拒否されたり、迷惑メールに振り分けられたり、メールが遅延して届いたりします。
IPレピュテーションを高める
IPレピュテーションは宛先側が判断するものなので、送信側が自身のIPレピュテーションを知ることは通常できません。しかし、正当な送信者としての振る舞いを継続すれば、IPレピュテーションを高く維持することは可能です。具体的には、以下のようなポイントに注意しましょう。
- 正しいドメインからメールを送信する
SPFやDKIMなどの送信ドメイン認証をきちんと設定し、宛先側から「なりすましメール」と判断されないようにしましょう。 - 受信者に望まれるメールを送信する
受信者のポジティブ・ネガティブな反応がIPレピュテーションに直結します。多くの人が開封し、できるだけ迷惑メール報告されないメールを送るようにしましょう。受信者に不快感を与える内容を送ったり、頻繁にメールを送りすぎたりすると、運用上問題なくても迷惑メール報告されてしまう場合もあります。受信者の反応を確認することは重要です。 - 宛先リストをクリーニングする
届かなくなった宛先や開封等の反応がなくなった宛先には送信を止めるようにしましょう。開封してくれない宛先に送信してもメリットはなく、迷惑メール報告を受けるリスクが高まるだけです。また、スパムトラップに送信してしまうリスクにもなります。
IPレピュテーションの維持は、大量のメール配信を行う場合にとりわけ重要です。一般に宛先側は、送信元IPアドレスごとに、一定時間内に受信可能な通数に上限を設けています。送信実績のないIPアドレスからいきなり大量の(数万通単位の)送信を行うと、この制限に抵触してメールが遅延(スロットリング)する恐れがあります。上のような点に注意し、IPレピュテーションを高く保ったまま徐々に送信通数を増やしていくと、この制限が緩和され、大量送信が可能になります(IPウォームアップ)。
さいごに
SendGridでメール送信する場合、Free/Essentialsプランでは他のユーザと送信元IPアドレスを共有します。これは、IPレピュテーションも他のユーザと共有することを意味します。他のユーザの良くない振る舞いによってご自身のメール送信に悪影響が及ぶ恐れもあるので、IPアドレスを独占して使用できるProプランをおすすめしています。SendGridで追加したIPアドレスはIPレピュテーションがない状態からスタートします。上で述べたIPウォームアップがはじめに必要ですが、一度構築してしまえば他ユーザの振る舞いに影響を受けることはなくなります。
「正当な送信者」であることを心がけ、メール到達率の向上を目指しましょう。
最後に、関連する記事を紹介します。
- レピュテーションを確認する8つの方法
レピュテーションを確認できるツールを紹介しています。実際にメール送信する宛先の評価というわけではないですが、参考になるでしょう。 - IPレピュテーション vs. ドメインレピュテーション
「送信者の信頼性」を測る方法として、送信元IPアドレスではなく送信元ドメインが用いられることもあります。