IPレピュテーション vs. ドメインレピュテーション

IPレピュテーション vs. ドメインレピュテーション

この記事は IP Reputation vs. Domain Reputation: Guide for Email Senders の抄訳です。

メールが届かない原因の多くは、サービスやシステムの不具合ではなく、送信者の信頼性に関係しています。
メールの到達率を左右する要素は、送信者認証の設定状況や宛先リストの品質、コンテンツなど多岐にわたりますが、その中でも特に重要なのが「レピュテーション」です。

ISP(インボックス・プロバイダ)は、メールが適切に送信されているかを常に監視し、その結果をもとに送信者のレピュテーションを随時更新して、メールを届けるかどうかを判断しています。

レピュテーションには「IPレピュテーション」と「ドメインレピュテーション」の2種類があります。
IPレピュテーションは評価が変わりやすく不安定ですが、評価が下がっても2~4週間ほど適切なメール配信を継続することで比較的容易に回復できます。一方、ドメインレピュテーションは一度評価が下がると回復が難しく、メールプラットフォームや送信元IPアドレス、さらにはプロバイダを変更しても引き継がれるという特徴があります。

多くのメール送信者はIPレピュテーションばかりを気にかけていますが、最近のISPはドメインレピュテーションをより重視する傾向が強まっており、IPレピュテーションよりもドメインレピュテーションを優先するケースも増えています。

どちらか一方でもレピュテーション管理を誤ると、メールは迷惑メールフォルダに届くことになるでしょう。誰の目にも触れず、これまでの努力や時間がすべて水の泡になってしまいます。

この記事では、レピュテーションの仕組みや2種類のレピュテーションの主な違いを解説します。

IPレピュテーションとは

メールの送信元を一意に識別するものとしてIPアドレスがあります。IPレピュテーションとは、IPアドレスベースで送信元を評価する指標です。

IPアドレスには、自分が占有する「固定IPアドレス」と、複数の利用者で共同利用する「共有IPアドレス」があります。大量のメールを送信する場合は、固定IPアドレスを使って独自のIPレピュテーションを構築するのが一般的です。
IPレピュテーションは通常0〜100の範囲で評価され、80以上であれば良好、70未満だとメールの到達性に悪影響が出る可能性があります。

IPレピュテーションに影響を与える主な要素は次の通りです。

  • 送信通数の安定性(急な増減の有無)
  • バウンス率
  • 迷惑メール報告率
  • 送信者認証の成功率(SPFやDKIMなど)
  • エンゲージメントの高さ(開封率やクリック率など)
  • ブラックリストへの掲載状況

トランザクションメールとマーケティングメールのように異なる種類のメールを送る場合は、通数にかかわらずIPアドレスを分けるべきです。IPレピュテーションを分離させることで、トランザクションメールの到達率を高く維持しやすくなります。

共有IPアドレスと固定IPアドレスの違いはこちら、レピュテーションを高く保つために欠かせない「IPウォームアップ」について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

ドメインレピュテーションとは

ドメインレピュテーションとは、IPアドレスではなく送信元ドメインをベースにした指標です。この指標に則った場合、ISPのフィルタリングではブランド(ドメイン)が優先されます。

ドメインレピュテーションに影響を与える主な要素は次の通りです。

  • ドメインの利用期間や実績
  • ウェブサイトの信頼性やアクセス数
  • 送信者認証の設定状況
  • サブドメインとルートドメインの使い分け
  • 他チャネルにおけるブランドへの評価

GmailやYahoo!メールなどは、IPアドレス単位ではなくドメイン単位で送信者を評価するようシフトしてきており、ドメインレピュテーションの重要性が高まっています。

IPレピュテーションとドメインレピュテーションのどちらを重視するかはISP次第です。IPレピュテーションよりもドメインレピュテーションを重視するISPもありますが、多くのISPは両方を見て総合的に受信メールの扱いを決めています。

また、ドメインオーソリティもドメインレピュテーションに大きな影響を与えます。ドメインオーソリティとは、そのドメインが検索エンジンからどの程度信頼されているかを示す指標です。スコアが高いほど影響力が強いと見なされ、検索結果ページで上位に表示される傾向があります。
一見メールマーケティングとは無関係に思えるかもしれませんが、ISPはこの指標も判断材料にしています。

ドメインレピュテーションの意義

レピュテーションを持ち運べる仕組みは、IPアドレスの変更やメール配信サービスの移行を柔軟に行いたい送信者にとって、これまでに築いたレピュテーションを維持できるというメリットがあります。

IPレピュテーションとドメインレピュテーションの違い

IPレピュテーションとドメインレピュテーションはどちらも重要ですが性質が異なります。
それぞれの違いをもう少し掘り下げてみましょう。

IPレピュテーションは賃貸物件のようなもので、環境を変えて新たにやり直すことが比較的簡単です。一方、ドメインレピュテーションは持ち家のようなもので、いったん評価が定まると変えるのは容易ではありません。

厄介なのは、どちらのレピュテーションを重視するかの判断がISPごとに大きく異なることです。メールマーケティングを成功させるためには、両方の特徴を正しく見極め、送信者として高い信頼を築くことが重要です。

項目 IPレピュテーション ドメインレピュテーション
持ち運びやすさ 低(特定のIPアドレスに紐づく) 高(IPアドレスを変更しても引き継がれる)
回復するのにかかる期間 2〜4週間 6〜12週間
評価に影響する要素 送信パターン 送信パターン+ドメインオーソリティ
管理しやすさ 高(固定IPアドレスを使用する場合 高(独自ドメインを使用する場合)
共有リスク あり(共有IPアドレスを使用する場合) なし
Gmailの重視度

自身のレピュテーションを把握しよう

レピュテーションはツールでチェックすることができます。代表的なものをいくつか紹介していますので、気になる方はこちらをご覧ください。

なお、レピュテーションを判断する絶対的な基準は存在しません。
自身のメールがISPにどう見られるかを正しく把握するためには、いくつかのチェックツールを組み合わせることをお勧めします。

レピュテーションを高く維持し、メールを確実に届けましょう。
レピュテーションに影響を与える要因についてはこちらで紹介していますので、ぜひご覧ください。

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