SendGridからメール送信する場合のSPFとDKIMの認証の仕組み – 後編
- 2022年10月11日
- by 有田繭子
- Category: ベストプラクティス 機能・使い方
SendGridサポートチームの有田です。
前編の記事では、SendGridからメール送信する場合のSPFとDKIMの認証フローについて解説しました。今回は、Domain Authentication設定のサブドメインとAdvanced Settings(高度な設定)について解説します。サポートにもよくお問い合わせをいただく内容ですので、ぜひご覧ください。
参考:SPF, DKIMの特徴と違い
参考:SendGridからメール送信する場合のSPFとDKIMの認証の仕組み – 前編
SPF用のレコードにサブドメインを付ける理由
Domain Authentication設定に関連して、以下のような質問をいただくことがあります。
- 既存のメールシステムでも同じドメインからメールを送信している。Domain Authenticationを設定すると、既存のメールシステムへの影響はあるか?
- 既存のメールシステム用にSPFレコードを登録しているが、ここにSendGridの送信元IPアドレスを追加する必要があるのか?
回答としては、Domain Authenticationを設定しても既存のメールシステムからのメール送信には影響せず、また、既存のSPFレコードを修正する必要はありません。
例えば ヘッダFromを kke.co.jp とすると、送信方法によって以下のような差異があります。
送信方法 | 認証ドメインの例 | SPF/DKIMレコードの保存先 | レコードの登録方法 |
---|---|---|---|
既存のメールシステム | kke.co.jp | (※エンベロープFromが kke.co.jp の場合) kke.co.jp を管理するDNSサーバ |
(※エンベロープFromが kke.co.jp の場合) kke.co.jp のDNSサーバにSPF/DKIM用のレコードを直接登録する |
SendGrid | em.kke.co.jp(*) | SendGridのDNSサーバ | kke.co.jp のDNSサーバにCNAMEレコードを登録し、SendGridのDNSサーバに登録されたSPF/DKIM用のレコードを参照する |
(*)のサブドメイン”em”は、Domain Authenticationで設定したサブドメインです。このサブドメインを付けることで、既存のメールシステムとSendGridからのメール送信で、参照するDNSレコードを切り分けることができます。既存のメールシステムからのメール送信でSendGridのDNSサーバを参照したり、逆に、SendGridからのメール送信で kke.co.jp ドメインのSPF/DKIMレコードを参照したりすることはないため、互いに影響を与えることはありません。
なお、この仕組み上、サブドメイン”em”には別のサービスで使用していない文字列を指定する必要があり、また、サブドメインを省略することはできません。
Advanced Settings(高度な設定)
ご利用の環境によっては、Domain AuthenticationのAdvanced Settingsの設定が必要なケースもあります。設定項目の概要は以下の通りです。
設定項目 | 概要 | 利用シーンの例 |
---|---|---|
Use automated security | SPF/DKIM用のレコードをCNAMEで参照するのではなく、自身のDNSサーバで直接管理する | 利用するレジストラで、CNAMEレコードにアンダースコアが使えない場合 |
Use custom return path | SPFで認証するエンベロープFromのサブドメインに任意の文字列を指定する | 他サービスと異なるサブドメインを明示的に指定したい場合 |
Use a custom DKIM selector | DKIMセレクタ(公開鍵を参照するためのラベル)に任意の文字列を指定する | 複数のSendGridアカウントで同一ドメインのDomain Authentication設定を作成する場合 |
Assign to a subuser(Proプラン以上) | 作成したDomain Authentication設定をサブユーザに割り当てる | 親アカウントで作成した設定を複数のサブユーザに適用する場合 |
Use automated securityをOFFにすると、下図のように認証フローが変わります。
図2) Use automated securityがOFFの場合 の認証フローでは 、SendGridはSPF/DKIM用のレコードを管理せず、「差出人のドメインを管理するDNSサーバ」が認証用のレコードを直接返します。これらのDNSレコードをSendGridが自動的に更新することはないので、固定IPアドレスを追加した際などは、ユーザが手動で更新する必要があります。
まとめ
前後編を通してSPF/DKIMの認証フローについて解説してきました。少しとっつきにくい機能ではありますが、到達率向上のための重要な機能ですので、少しでも理解の手助けとなれば幸いです。