SIGNAL 2019 参加レポート その1 – キーノート
Twilio (SendGridの親会社) は毎年SIGNALというイベントをサンフランシスコで開催しています。今年は8月6,7日の2日間、場所はカンファレンス会場の定番モスコーニセンターでした。
弊社からは佐藤(@awwa500)と私(@nakansuke)が参加し、主にSendGridに関するセッションを聴講しました。これから複数回に分けてその様子をレポートします。
第一弾は初日のキーノートです。
SIGNALはCEO Jeff Lawsonのキーノートから始まります。これまでの振り返りや代表的な顧客の紹介、数値やビジョン、新機能の発表など大変盛りだくさんで書き出すとキリがないので、今回はSendGridの部分をピックアップして紹介します。キーノートの中盤で、Jeffに紹介されSendGrid CEOのSameer Dholakiaが登壇しました。
なぜメールか?
まずはなぜメールがコミュニケーションチャネルとして重要なのか、そのおさらいです。
1. Ubiquitous – 至る所に存在するから
世界中で38億人の人々が毎日、いつもメールを利用しています。キーノートが始まるまでに、メールをチェックしていない参加者はいないでしょうし、人によっては寝る前や起きてすぐベッドで、ひどい場合はトイレでチェックすることもあるでしょう。
2. Durable – 同じアドレスを使い続けるから
これまでの人生で何回引越しをしましたか?なんらかの事情で住む場所が変わり引っ越したことがある人は多いのではないでしょうか。ではメールアドレスは?個人的に利用しているアドレスを変更する、というのは非常にレアなケースかと思います。
3. Searchable – デジタルライフの記録として利用されるから
メールは私たちの生活の記録(System of Record)といえます。納税時期になったら、いつどれだけの寄付をしたか、メールを検索してそれらの記録を探します。いつ何を買ったか、どんなことをしたのか、私たちのデジタルライフの記録はメールに残っているのです。
なぜSendGridか?
ではなぜSendGridがこれほどまでに使われているのでしょうか。
現在では8万もの企業が、毎月500億通のメール送信のためにSendGridを利用しており、我々はそれを確実に宛先までお届けしています。超巨大なプラットフォームですが、スタートアップからエンタープライズまで、様々なスケールのお客様に利用いただいています。
私たちは10年ほど前にメールAPI分野の先駆けとして、SendGridの提供を開始しました。簡単にアプリケーションからメール送信が可能になり、サインアップの確認、パスワードリセット、レシートなどの非常に重要なユースケース(トランザクションメール)で利用されてきました。開発者が簡単に、シンプルに使えるように改善を続け、クラウドメールサービスのリーダーとして業界を牽引してきました。
なぜ、8万もの企業がSendGridを使うに至ったのでしょうか?
1つ目はクラウドへの移行があったから。オンプレミスの環境をクラウドに持っていく際、当然古くからあるメールサーバも対象になります。しかし、そのままだとクラウドの柔軟性やスケールといった恩恵を受けることはできません。だからSendGridを使うのです。
2つ目は到達性(Deliverability)を改善したかったから。メールのエコシステムでは、悪意のあるメールや必要とされていないメールを無くす努力をしています。その結果、正当なメールであっても宛先に届けることは非常に難しくなっています。それに対応するため、SendGridのようなサービスが必要なのです。
3つ目はメール送信はひとつのプラットフォームにまとめたかったから。上述のトランザクションメールだけでなく、プロモーションやニュースレターの送信も必要になります。全てを信頼できるプラットフォームにまとめるというのは非常に理にかなっています。
新サービスの発表
プレゼンテーションの中で、以下の3つの機能が発表されました。
- Email Validation API (Open beta)
- Automation (GA)
- Ads (Private beta)
Email Validation APIを使用することで、そのメールアドレスがValidなのか、Riskyなのか、はたまたInvalidなのか分かります。実際に送る前に確認することでバウンス率を低下させることが可能です。バウンス率が低下するということはレピュテーションが向上し、到達性が改善されるということです。
Automationはステップメールのようなスケジュール送信を可能にする機能です。これまで多くの要望をいただいていた機能です。
Adsはその名の通り広告に関する機能です。エンゲージメントを高めるため、継続して新たなチャネルを追加する必要があります。今回は広告というチャネルを追加しました。宛先リストを使用し、それを対象にしたターゲット広告を配信することが可能になります。SendGridプラットフォームから、Facebook, Instagram, Googleの広告を管理できるようになります。
※弊社(構造計画研究所)経由で作成されたアカウントでは、いずれの機能も現状ご利用になれません。SendGrid社Productチームと提供に向けて協議を続けておりますので、しばらくお待ちください。
TwilioとSendGridの活用例
最後に、TwilioとSendGridの両方をコミュニケーションチャネルとして活用した例として不動産サービスを提供しているZILLOW GROUPが紹介されました。
物件を探す際、立地やレイアウト、値段など様々な基準で検索をします。好みの条件を保存しておき、それに合致する物件が新たに見つかった場合、まずはSMSでその情報を通知します。気づくのが遅かった場合、すでに契約済みになってしまっているかもしれません。だからすぐに、そして気付きやすいSMSで送るのです。
そしてその後、メールでその物件の詳細、例えば写真やビデオツアー、そして契約までの詳細な手順が記載された書類を添付することもできますね。
このように、メッセージの内容や緊急度合いなどに応じて適切なコミュニケーションチャネルを選択することが必要になります。1つのプラットフォームから、シームレスに顧客とコミュニケーションを取ることによって、より価値の高いエンゲージメントプラットフォームとして機能するようになるのです。
最後に
その後は連携のデモがあり、SendGridのパートは終了しました。
「適切なタイミングに、適切なコミュニケーションチャネルで」言われてみると非常にシンプルなことではあるのですが、それをうまく実現できているケースは少ないように思います。
最高のコミュニケーションプラットフォームを目指す、TwilioとSendGridの考えがわかりやすく表現されており、その後のブレイクアウトセッションも楽しみになるキーノートでした。