iOSのプライバシー保護機能が強化されます
- 2021年9月9日
- by SendGrid
- Category: メールマーケティング 技術ネタ
この記事は Apple Mail App Privacy Protection: What Email Senders Need to Know の抄訳です。
Appleは2021年6月7日に開催した自社カンファレンスWWDCにて「メールプライバシー保護(Mail Privacy Protection)」を発表しました。メールプライバシー保護のアップデートは、Appleが進める、ユーザが自分のデータについて管理できるようにするための取り組みの一環ですが、メール送信者にとって多くの影響があります。どんな影響があるのか理解するために、Twilio SendGridのエキスパートに解説をお願いしました。
Appleのメールプライバシー保護とは何か?
メールプライバシー保護は、iOS 15で新たに追加された設定機能で、iOS 15で初めてAppleのメールアプリ(以降、Apple Mailと記載)を起動すると、どのデータを外部に共有しても良いか選択する必要があります。ユーザは、IPアドレスや位置情報を秘匿するかどうか、また、メール送信者の開封トラッキングを匿名化(誰が開封したかわからないように)する画像キャッシュ機能を有効にするかどうか、を選択できます。
メールプライバシー保護は送信者にどんな影響を与えるか?
開封トラッキングが匿名化されるため、メールに対するエンゲージメントを完全に理解することができなくなります。クリックトラッキングは引き続き利用可能ですが、開封情報なしにはエンゲージメントが低い受信者を認識したり、メールの送信が成功だったか評価したりすることは難しいでしょう。
メールプライバシー保護はいつから有効になるか?
iOS 15は2021年9月のリリース見込みで、iOSと共にメールプライバシー保護機能は徐々に広がっていくと思われます。
エンゲージメントデータは、メールプライバシー保護機能によってどんな影響を受けるか?
iOS 15以降でApple Mailを使用しており、かつ、メールプライバシー保護機能を有効にしている受信者のエンゲージメントデータが影響を受けます。
しかし、全体でどの程度の影響があるかを予測することは非常に困難です。おそらくメールプライバシー保護機能が有効になっているApple Mailに送信されたメールは自動的に開封されてしまうと考えられます。これは、たとえgmail.comやyahoo.comであっても、Apple Mailで受信できるように設定されていると、自動的に開封されてしまうということです。通常はGmailアプリやChromeブラウザを利用してメールを確認していても、Apple Mailでも受信できるよう設定しているだけで、自動的に開封が発生してしまう可能性があります。
メールプライバシー保護機能はどうやって開封を匿名化するのか?
SendGridではこの新機能を積極的に調査・テストしています。iOS 15のリリース後も新たに分かったことがあれば引き続きブログ等でお知らせします。
現時点までの検証の結果には一貫性がありませんでした。全ての画像がプロキシサーバに読み込まれたり、一部のみが読み込まれたり、従来通りの挙動だったりしました。
どの受信者が機能を有効にしているかどうかは確認可能か?
正確にはわかりません。これまでの検証では、一般的なユーザエージェント、IPアドレスから開封イベントが発生していたため、これを利用してApple Mailでメールプライバシー保護を利用しているかどうか推測可能ですが、あくまでも推測に過ぎません。
Apple Mailを利用して閲覧されているのはSendGridのメールの何%?
SendGridの全開封データのうち7.7%がApple Mailのものでした。一方でLitmusはメールクライアントの市場シェアを公開しており、iPhoneが37%、Apple Mailが10%となっています(2021年8月)。この割合はメール送信サービスによって異なり、30%程度がApple Mailによって開封される、と考えるサービスもあるようです。
ユーザエージェントを正確に追跡することは非常に難易度が高いため、このようにデータがばらつくと考えられます。また、ビジネス領域によってもApple Mailを利用している受信者の割合は異なるでしょう。9月以降、開封率がどのように変化するか注視しておくことで、自社の宛先リスト内にApple Mailユーザがどれくらいいるか推定できると考えられます。
Sunset Policyにはどのような影響があるか?
私たちは、Sunset Policyを作成して一定期間エンゲージメントのない受信者への送信は止めることを推奨しています。
参考:エンゲージメントやリストクリーニングに重要なSunset Policyを作成しよう
Sunset Policyの必要性と実践例
開封トラッキングができないのであれば、クリックトラッキングで代用することが最善の解決策であると考えられます。しかし、クリックイベントは、開封イベントよりも発生頻度が低いため、結果的に多くの購読者への配信を止めることになるかもしれません。
もし他のメールプロバイダやOSが同様のアプローチをとった場合どうなるか?
Twilio SendGridをはじめとしたメール配信サービスはそれに適応していくしかありません。エンゲージメントの計測のため開封をトラッキングすることは数十年もの間、業界の標準的な手法となっていました。
もしエンゲージメントデータの大半を失ってしまうのであれば、どの受信者が自分たちのデジタルコミュニケーションを真に欲しているかどうかを判断するための新たな方法を考えなければなりません。例えば以下のような方法が考えられます。
- 開封は無視して、クリックのみですべてを判断する
- (開封、クリックなどの)直接的なエンゲージメントデータは利用しない
- 再確認メールを定期的に送り、エンゲージメントを計測する
- SMS、プッシュ通知といった他のチャネルを利用してエンゲージメントを計測する
進化し続ける業界
メールの世界は進化していますが、Twilio SendGridはこういった変化に適応するためのベストプラクティスや提案を続けていきます。
今後も新たな情報がわかり次第、ブログ記事等でお知らせします。