【2024年版】リテンションマーケティングの概要、戦略、事例
- 2024年4月18日
- by SendGrid
- Category: ベストプラクティス
この記事は Retention Marketing: What It Is, Strategies & Examples (2024) の抄訳です。
リテンションマーケティングはもっと注目されるべき戦略です。これは、100人の気まぐれな顧客よりも、10人の熱烈なファンがいる方が価値があるという考えに基づいています。気まぐれな顧客は一度しかあなたの企業から商品を購入しないかもしれませんが、ブランドのファンは、自分自身だけでなく子供や知人、愛犬のためなど事あるごとに利用してくれるでしょう。
一方、リテンション(=既存顧客の維持)を重視しないマーケティングは、せっかく買い物をしてくれた顧客をそのままマーケティングファネルの外に逃がしてしまうようなものです。あり得ない話に思えますが、実は多くの企業がこの手の失敗をしています。生涯顧客やリピーターよりも、新たな市場や潜在顧客に予算を投じ続けているのです。
新規顧客を獲得するコストは以前ほど多くはかからなくなりましたが、それでも既存顧客を維持する方がコストが抑えられることに変わりありません。
マーケティングのアプローチを変えたいなら、ぜひこの記事を参考にしてください。
リテンションマーケティングとは何か?メリット、戦略、事例など、リテンションマーケティングについて知っておくべきことを全て解説します。
リテンションマーケティングとは?
リテンションマーケティングとは、顧客との関係を育て、維持するための戦略や手法のことです。業界や規模にかかわらず、リピーターを育てるためにあらゆる企業で実践されています。
例えば、Uberが割引クーポン付きのプッシュ通知を送ってくるのも、ピザ屋が一枚買うともう一枚無料になるというテキストメッセージを送ってくるのも、顧客に再び利用してもらうためのリテンションマーケティング手法の一つです。
他にも次のような活動がリテンションマーケティングに含まれると言えるでしょう。
- オンボーディングをサポートする追加資料やTipsが載ったあたたかいウェルカムメール
- ロイヤルカスタマー限定のVIP特典
- たくさん購入した顧客が特典を受け取れるポイントプログラム
- 教育的なコンテンツとプロモーション要素を組み合わせた定期的なニュースレター
- メールの受信頻度をカスタマイズできるように、購読管理画面のリンクを含んだ再エンゲージメントメール
リテンションマーケティングを行う手段はメールだけではありません。SMS、プッシュ通知、音声、チャット、映像、ソーシャルメディアなどを活用して顧客のエンゲージメントを高め、引き留めることができます。
リテンションマーケティングを正しく行えば、ブランドに対する愛着を持った、より収益性の高い顧客を育てられるでしょう。
最適なリテンションマーケティングチャネル
リテンションマーケティングにおいて、すべての人に効果的な万能のアプローチ方法はありません。各企業の特性や業界、ターゲット市場に応じて、成功しやすいチャネルも異なるでしょう。リテンションマーケティング戦略を立てる際に考慮に入れるべきチャネルを紹介します。
- メール
メールはオプトインを必要とする数少ないチャネルの一つです。顧客にメールアドレスを提供してもらう際には、メールを受け取ることに同意してもらわないといけません。オプトインが取れたら、個別打ち合わせのフォローアップやアップセルの機会創出などにメールを使うことができます。 - PPC広告(クリック課金型広告)
PPC広告によってリターゲティングを行うことができます。例えば、30日分のサプリメントを購入した顧客に対して購入から30日後に同じ(または類似の)製品の広告を配信できます。 - SMS
SMSもオプトインが必要です。メールより開封率が高いですが、ほとんどの人はメールアドレスほど簡単には電話番号を教えてくれません。提供された電話番号は大切に扱いましょう。適切に使用すれば、長期的に役立てることができます。 - ソーシャルメディア
ソーシャルメディアの活用は顧客との関係構築そのものです。プロフィール欄を使って、既存顧客をフォロワーに、フォロワーをロイヤルカスタマーに変えましょう。 - プッシュ通知
プッシュ通知は、アプリの再訪やリピート購入を促す優れた方法です。ただし、迷惑だと思われて通知をオフにされないように、控えめに使用してください。
目安となるリテンション率は?
「時と場合による」というのがその答えです。予想通りの回答かもしれませんね。
業界ごとのベンチマークをいくつか示します。ここに書かれた数字を絶対視すべきではありませんが、「良い」と言えるリテンション率の参考値としてお考えください。
- ほとんどの業界で、期待できる平均的なリテンション率は8週間で20%以下です。
- SaaSやEコマース業界では、8週間で35%を超えるリテンション率を見込めます。
- メディアや金融業界では、8週間で25%を超えるリテンション率を達成できることがあります。
リテンションマーケティングのメリット
では、リテンションマーケティングにかける時間と労力には価値があるのでしょうか?他にもっと良い投資先はないのでしょうか?
やはり、これも状況によります。
まだ顧客がほとんどいない新しいビジネスであれば、顧客を見つけることを優先したいと思うものですが、購入者が現れはじめたらお会計をしてそれきりとはいきません。リピート購入の促進やブランドロイヤルティ向上のためにできる限りのことをしたいと考えるでしょう。
そこでリテンションマーケティングが登場します。
リテンションマーケティングの利点は以下の通りです。
- コスト効率が良い
新しいリードを見つけるのは困難ですが、既存顧客のメールアドレスや電話番号を既に知っているのであれば、リマーケティングやリテンションは容易です。マーケティングに必要な作業の半分以上が完了していると言ってもよいでしょう。 - 顧客と長期的な関係を築ける
消費者の77%が、少なくとも10年の間、ブランドとの関係を維持しています。あなたも高校時代に履いていたのと同じブランドの靴を今も履いていますよね? - 費用対効果が高い
消費者の61%はファンであるブランドで購入するためにわざわざ出かけ、60%がファンであるブランドの方が購入頻度が高いと回答しています。 - 口コミマーケティングの効果を期待できる
ロイヤルカスタマーの75%が、友人や家族に製品をおすすめして売り込んでくれます。
3つのリテンションマーケティング戦略
リテンションマーケティング戦略は単純なものから複雑なものまで多岐にわたりますが、その中でどれが効果的かを判断するためにすべての施策を試すのは不可能です。
ここからはおすすめのリテンションマーケティング戦略とその特徴をお伝えします。
1. オートメーションメールやニュースレター
メールマーケティングでは、過去のマーケティングキャンペーンの結果から学び、ターゲットを微調整し、メッセージを洗練させることができます。データを分析して、適切なメッセージを適切な顧客に適切なタイミングで送ることも可能です。例えば、メールの種類ごとの開封データから、購入する可能性が最も高くなるように割引の案内を送るといったことが考えられます。
鍵となるのはセグメンテーションです。リテンションメールキャンペーンの通数や宛先リストが大規模になるほど、セグメントを作成できるかどうかをより注意深く観察するようにしましょう。エンゲージメントの高い受信者のセグメントを作成し、付加的なコンテンツやプロモーションを含んだメールを送る施策を検討してもよいでしょう。
ただしエンゲージメント率を注視する必要があります。エンゲージメント率が下がったら、少し送りすぎている可能性があるので、元に戻しましょう。
2. ロイヤルティプログラム
ロイヤルティプログラムでは、購入し続けてくれる顧客に特典を送ります。
街中の数あるコーヒーショップの中からあなたの店を毎日選んでくれている顧客に、10杯ごとに1杯の無料ドリンクを提供するのは理にかなっています。
ロイヤルティプログラムは顧客に対する気配りの表れです。よく使う店舗やECサイトにその利用頻度の高さを認識されていると顧客自身が気付いたとき、単なる売り手と買い手の関係を超えて、友人のような親密な関係性へと発展していくのです。
他の施策として、紹介プログラムも考えられます。顧客が別の顧客を紹介してくれた時は営業チームへの報酬のようなものと考えて、ちょっとした感謝の気持ちを送るのはどうでしょうか?
どんな特典を顧客に提供できるか考えてみてください。昔ながらのポイントカードや誕生日割引である必要はありません。予想外のうれしいおまけや限定アクセスのようなものでもいいのです。長年の顧客だけが買える裏メニューなんてかっこいいと思いませんか?
3. マルチチャネルコミュニケーション
特定のコミュニケーション方法を強いるのではなく、顧客にとって最も快適な方法を選べるようにしましょう。たとえば、以下の方法を検討してみてください。
- メール
- SMS
- Facebook Messenger
- チャット
- お問い合わせフォーム
これらのチャネルは双方向の会話が可能です。その内容はカスタマーサポートに関するものかもしれませんし、買うか迷っている花柄のプリントに合うジーンズについてや、現在の技術スタックのうち最適なソリューションは何かといったカジュアルな会話かもしれません。
リテンションマーケティングのベストプラクティス
最高のリテンションマーケティング戦略も、基本を押さえていなければ失敗に終わってしまいます。メールマーケティングキャンペーンやプッシュ通知を始める前に念頭に置くべきベストプラクティスを紹介します。
- オプトインを尊重する
明示的な同意なしにメッセージを送るのは絶対にNGです。顧客が購入を完了するためにメールアドレスを入力したからといって、メールを大量に送り始めて良いわけではありません。必ず最初にオプトインをとりましょう。 - 別れを尊重する
悲しいですが、別れはやってきます。マーケティングにおいて最大限の努力をしたにもかかわらず顧客が別のブランドを選ぶことがありますが、それは何か問題があったからというわけではありません。単に、より適したものを他に見つけたというだけのことです。強引に引き留めることはせず、ブランドに関心がなくなった顧客はメールリストから削除しましょう。 - 試してみる
最初から最良のアイデアが出せるとは限りませんが、実際に試してみないことには良し悪しも分かりません。新しいマーケティングチャネルや施策を試し、最も反応が良いものを見つけましょう。顧客の反応が良ければ取り組みを本格化させ、そうでなければ次のアイデアを試してみるべきです。 - モニタリングする
適切なソフトウェアやシステム、プロセスを使えば、リテンションマーケティングの成果をトラッキングできます。解約や離脱が減っているのなら、何が効果的だったかを見極め再現性を持たせたいものです。顧客生涯価値、リピート購入、顧客の紹介など、重視する指標を設定し入念に観察しましょう。 - インセンティブを与える
ただ商品を用意しただけでは顧客は集まりません。ブランドへの価値を感じられるインセンティブを与え、ロイヤルティを維持しましょう。売上よりも顧客満足を重視する姿勢が正しい指針につながるはずです。
リテンションマーケティングの事例
リテンションマーケティングの事例を見てみましょう。あなたが実際に経験したことがある施策もあるかもしれません。
ここで紹介する事例に押し付けがましいものは1つもありません。
1. Xboxのリワード
Xboxは、ユーザを引き留め、リピーターになってもらうため優れた取り組みを行っています。ゲームをプレイして何かを達成するとポイントを獲得でき、そのポイントを別のゲームの購入に充てられます。
ポイントや友達リスト、そして通知といったあらゆる要素が、ユーザに長時間ゲームを楽しんでもらう魅力になっています。このユーザ体験は素晴らしく、しかも終わることのない継続的な仕組みであり、Microsoftの大きな収益源になっています。
ユーザにマーケティングだと意識されることなく愛着を持ってもらい続けることこそ、理想的なリテンションマーケティングと言えるでしょう。
2. Harry’sのカミソリ
Harry’sはカミソリを販売しており、その販売方法はリテンションマーケティングそのものです。サブスクリプションモデルが採用されており、定期的な刃の交換のためサインアップするように促されます。
商品を気に入った顧客は、永遠に替刃を継続購入することになるでしょう。
Harry’sはメールマーケティングやリターゲティングによって購入者に再訪してもらうのではなく、サブスクリプション契約の特典である大幅値引きによって初めからリピーターになってもらう戦略をとっています。値引きをすれば売上は少し減りますが、リピーターを確実に得ることができます。
3. Old Navyのスーパーキャッシュ
Old Navyの「スーパーキャッシュ」は天才的な施策です。25ドル使うごとに後日使用できる10ドル分のクーポン(=スーパーキャッシュ)が還元される仕組みです。もし100ドルを使って40ドル分のスーパーキャッシュを獲得したら無駄にはしたくないですよね?無駄にしないためには数週間後にさらに100ドル使わなければなりません。
このリテンションマーケティング戦略では、顧客が繰り返しショップを訪れてより多くの買い物をするように仕向けます。スーパーキャッシュは「使用するか失効するか」なので、他の店で買い物をする気になれないのです。
リテンションマーケティングをはじめましょう
リテンションマーケティングのイメージはつかめましたか?
チャネル、戦略、施策を絞り込んだら、次は顧客データを収集して分析をしましょう。チャネルやタイミング、メッセージを適切に調整すれば、きっとリテンションマーケティングを成功に導けるはずです!
リテンションマーケティングにメールを用いる際は、ぜひTwilio SendGridをご利用ください。