メールボックスのAI技術 ー 自動抽出機能編

メールボックスのAI技術 ー 自動抽出機能編

この記事は Mailbox Provider AI: Automatic Extraction and Email Previewsの抄訳です。

情報の質よりも「注目度の高さ」に価値があるとされるアテンション・エコノミーの時代において、メール送信者は開封やクリックを増やすために試行錯誤しています。様々に工夫されたメールが大量に届く中、受信者が本当に必要な情報を探し出すのは至難の業です。
そこで役立つのが、GmailやYahoo!で導入されているAIの自動抽出機能です。お気に入りのお店の割引率やクーポンコードなど、欲しい情報を瞬時に見つけられます。

自動抽出は消費者にとって便利な機能ですが、メールマーケターは、メールの見え方やエンゲージメントへの影響に注意しなければなりません。今回は、自動抽出機能の課題と、それを解決するGmailアノテーションについて、実際のメールの例を交えてご紹介します。

自動抽出機能とは

受信メールの本文を自動的に解析し、重要だと判断された情報を受信トレイのプレビューに表示する仕組みです。メール全体を要約してくれるApple Intelligenceとは異なり、自動抽出機能では割引コードや割引率、セール終了日、画像などを抜粋して表示します。現時点では、自動抽出が適用されるメールはまちまちですが、技術が進歩すれば、すべてのプロモーションメールに適用されるようになるでしょう。

メールマーケターが知るべき自動抽出の課題

自動抽出機能にはいくつか課題があります。一つは、今の技術ではマーケティング担当者が一番見てほしい情報を的確に抜き出すことができない点です。その結果、コンテンツや画像がランダムに表示されてしまい、メールの魅力が損なわれてしまうことがあります。以下にGmailの受信トレイの例を示します。

Gmailの受信トレイの例

差出人と件名の下に表示されている画像はプレビュー用に最適化されておらず、また、Wolf & Badgerの製品が写っていません。メールを開いてみると、下部にあるブランド店舗紹介のバナーから画像が抽出されていることがわかりました。

Wolf & Badgerのメール

メイン画像ではなく2番目に置かれている画像が抽出されるのは、自動抽出ではよく見られる挙動のようです。

二つ目の課題は、メールマーケティングの成果を正しく評価できなくなる可能性がある点です。
以下のL.L.Beanの例では、割引コードのような魅力的な情報がプレビューに表示されています。受信者はメールを開封したり本文内のリンクをクリックしたりすることなく、割引コードを取得することができてしまいます。

L.L.Beanの例

では、この割引コードはどこから抽出されたのでしょうか?メール本文を探してみると、一番下の小さな文字の中に埋もれていました。L.L.Beanが隠しておきたかったと思われる割引コードは、自動抽出機能によって見つけ出されてしまいました。

自動抽出機能によって見つかった割引コード

L.L.Beanは受信者に割引コードを使わせたくなかったわけではありません。おそらく、メール本文内のCTAボタンをクリックして割引コードにアクセスしてもらう形を想定していたのでしょう。

割引コードへのアクセス

メールを開封せずに入手した割引コードを使って受信者が買い物をすると、最終的に収益は上がりますが、その売上がメール経由であるかどうかを正確に計測できなくなってしまいます。これではメールマーケティングの成果を正しく評価できません。

このように、マーケターにとっては、受信トレイのプレビューに割引コードが目立つように表示されるのは望ましくない場合があります。「開封して割引コードをゲット!」などの件名でエンゲージメントを高めるキャンペーンを設計していても、プレビューに割引コードが表示されていたら台無しです。

また、開封やクリックが行われなくなる可能性を考えると、受信者がアクティブかどうかを判断することは今後ますます難しくなるでしょう。 そのためマーケターは、購読者にプロモーションメールの受信を継続するかどうかを確認する必要があります。特に、クリックや購入、コンバージョンなど、明確なエンゲージメントがない購読者に対しては、定期的に確認を行いましょう。

課題への対処方法

もしこの記事を読んで心配したり焦ったりしているなら、ご安心ください。ほとんどコントロールできないApple Intelligenceの要約機能とは違い、自動抽出によるランダムで不適切なプレビューには対処方法があります。それはGmailアノテーションを活用することです。

Gmailアノテーションは、2018年にGoogleが「マーケターがプロモーションタブからより多くの価値を得られるように」と開発しました。この機能の説明には、画像やお得情報、有効期限などをプレビューに表示することで、プロモーションタブ内のメールを魅力的にすることができる旨が書かれています。

どこかで聞いた話だと思いませんか?実はこれこそ、いまプロモーションメールに自動で適用されている自動抽出機能そのものなのです。
これらはよく似た機能ですが、Gmailアノテーションであればプレビューを自分でコントロールできます。schema.orgというコードベースで作られており、具体的な使用方法がGmailの公式サイトで公開されています。

いくつかの事例を見てみましょう。Neiman Marcusは件名と組み合わせて受信者の目を引き、開封を促しています。

件名と組み合わせて受信者の目を引く

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Brooks Runningのように、複数の画像と画面スクロール機能を活用して、魅力的な注釈付きの画像プレビューを作成することもできます。

魅力的な注釈付きの画像プレビュー

Gmailアノテーションでは、一律で同じWebページに誘導するのではなく、実施しているプロモーションに合わせて画像のURLを設定できる点にも注目です。例えば、上記の受信トレイのプレビューで「Gh​​ost Max SE」の画像をクリックするとGhostシューズのランディングページに移動し、「Glycerin 22」の画像をクリックするとGlycerinシューズのランディングページに移動します。

「Gh​​ost Max SE」の画像をクリックするとGhostシューズのランディングページに移動
「Glycerin 22」の画像をクリックするとGlycerinシューズのランディングページに移動

今こそGmailアノテーションを使い始めるべきです。これからどんどんメールの自動抽出機能は普及するでしょう。そのため、表示内容をコントロールできるようにしておく必要があります。そして、いつものように、様々なメールボックスプロバイダやデバイスでどのようにプレビュー表示されるかを入念に確認しましょう。

さいごに

プロモーションメールを送信しているなら、既に一部のメールは自動抽出機能の影響を受けている可能性があります。この新しいテクノロジーに逆らおうとするのではなく、Gmailアノテーションを使って表示をコントロールできるようにしましょう。

ここで、「Gmailアノテーションを使うと、送信したメールはプロモーションタブに振り分けられるのでは?」という疑問が浮かぶかもしれません。結論から言うと、その通りです。しかし、そもそもプロモーションメールはプロモーションタブに振り分けられるのが本来の姿です。受信者がタブを使ってメールを分類しているということは、プロモーションメールを一か所にまとめて確認したいと考えているからです。それならば、少しの手間をかけてコーディングし、メールを目立たせることで顧客体験を向上させてみてはどうでしょうか?

まだGmailアノテーションを使うべきか迷っているなら、以下のプロモーションタブを覗いてみてください。最初に目が惹きつけられたのはどこでしょう。

プロモーションタブ

弊社のブログでは、今後もメールマーケティングを最適化するための最新情報や専門的な知見を発信していきます。ぜひご覧ください。

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