メールボックスのAI技術 — Gemini in Gmail編

メールボックスのAI技術 — Gemini in Gmail編

この記事は Mailbox Provider AI: Gemini for Gmailの抄訳です。

「garbage in, garbage out(コンピュータに誤ったデータを入力すると、誤った結果しか得られない)」という概念をご存じでしょうか。この概念はAIの世界にも当てはまります。正しい答えを得るには、AIに適切なデータセットやプロンプト、パラメータを与える必要があります。

最近はメールボックスでもAIが使われています。マーケターの皆さんは、せっかく丁寧に作り込んだコンテンツが、不本意な形でプレビュー表示されたり自動抽出されたりすることに頭を悩ませているかもしれません。こういったAIの機能を完全にコントロールすることはできませんが、メール送信者ができる対策もあります。それは、AIの特徴を知ってテストを重ね、「garbage in, garbage out」を念頭に最適なデザインをすることです。

今回はGemini in Gmailに注目し、Geminiの使い方やマーケターが知っておくべきポイント、テストの方法を紹介します。

Geminiとは?

GeminiはGoogleが提供するAIツール群の名前です。提供されている機能は、AIアシスタントGoogle検索の強化Googleマップやカレンダーと連携したスケジュール調整、ソースコード生成やデータベース管理を行う開発者向けツールなど多岐にわたります。

そのうちの一機能であるGemini in Gmailはメールボックスを管理するツールです。Gmailの利用者にとってとても便利な機能が提供されています。一方でマーケターは、Geminiが受信者の行動やメールの見え方に影響を与える可能性があることを意識する必要があります。

Geminiによるメールへの影響

B2Cメールの宛先のうち50〜80%をGmailのメールアドレスが占めると言われていますが、その全員がGeminiを使っているわけではありません。Geminiを利用できるのは、Google Workspaceの利用者と、gmail.comの有料プランの利用者だけです。
有料プランの利用者の多くは、映像制作ツールのFlowWhisk、調査や執筆作業をサポートするNotebookLMの利用を目的としています。Demandsageの統計情報によると、Geminiの利用者の約70%が「調査(40%)」または「制作活動(30%)」で利用しており、Gemini in Gmailを含む「生産性向上」を目的としたユーザは20%に過ぎないそうです(出典:「Users and Demographics: How Many People Use Gemini in 2025」)。

Demandsageの統計情報

結局、3億5,000万人のGeminiの月間アクティブユーザのうち、どのくらいの人がGeminiを日常的に使っているのかは正確には分かりません。
もう一点重要なポイントとして、メールの要約や検索でGeminiを使うためには、利用者自身がプロンプトを入力する必要がある点が挙げられます。Apple Intelligenceのように自動的にプレビュー表示されるわけではなく、利用者が自発的に利用しない限り動作しないため、マーケターがAI対策を検討する際には、優先度を下げていいかもしれません。

Gemini in Gmailの機能

Gemini in Gmailを過剰に恐れる必要がないとわかったところで、具体的な機能を見ていきましょう。以下は、受信者が入力したプロンプトとGeminiの回答例です。

  • 1つのメールスレッドや、特定の人物・ブランドから受け取ったメールの要約
    メールの要約

    「今週のワシントン・ポストのメールを要約してください。」

  • 特定条件のメールの検索(未読メールなど)
    特定条件のメールの検索

    「未読メールを検索してください。」

    特定条件のメールの検索
  • セールや割引などのお得情報の検索
    セールや割引などのお得情報

    「この1週間で最も割引率の高いセール情報を教えてください。」

  • 返信文の作成のサポート
    返信文の作成のサポート

    「夏のキャンプのお誘いへの返信文を作ってください。」

  • Gmailの機能や使い方のサポート
    Gmailの機能や使い方のサポート

    「不在メッセージの設定方法を教えてください。」

  • Webで公開されている情報の引用
    Webで公開されている情報の引用

    「7月4日にカリフォルニア州のトラッキーでできることについて、父にメールを書いてください。」

  • Googleカレンダーに登録した予定の反映
    Googleカレンダーに登録した予定の反映

    「今後の旅行の予定を教えてください。」

  • メールの文体や語調の調整

    「猫のサディに、どれだけ愛しているかを伝えるメールを書いてください。」
    「『ピーキー・ブラインダーズ』のアーサーみたいな口調でお願いします。」

マーケターが注意すべきポイント

Geminiは、Gmailのメールボックスを整理したいユーザにとって大変便利な機能です。利用者が増えるにつれて、受信者の行動が変化するかもしれません。

Geminiの優れた検索機能と要約機能を組み合わせると、メールを開封したりクリックしたりしなくても内容を把握することができます。さらにプロンプトを使うと、魅力的なプロモーションやセール情報を提供するWebサイトに簡単にアクセスできます。メールで送られてくるニュース記事の要約もお手のものです。

一方でマーケターにとっては、エンゲージメントの計測が難しくなります。受信者がAI要約を通してあなたのメールに興味を持ったかどうかは、従来の指標である「開封率」や「クリック率」に表れないからです。そのため、明確なリアクションがない受信者に対しては、今後もメールを受け取りたいかどうかを確認し、肯定的な反応がなければ送信リストから削除するような対応が求められます。

要約

また、AIによる要約はテキストベースのシンプルなものなので、マーケターが工夫を重ねた魅力的なコンテンツが隠れてしまいます。

残念ながら、Geminiにピックアップされるコンテンツを送信者が制御することはできません。しかし、主要なデザインやCTAが目立ち、上部に表示されるかどうかはテストできます。以下はGeminiによるメールの要約の例です。

Geminiによるメールの要約の例

Geminiによるメールの要約の例

Geminiの要約ではブランドの個性は反映されないため、メール内のユーモアや遊び心は伝わらない可能性があります。とはいえコンテンツの工夫が全く無意味なわけではなく、メールのデザインは要約に影響を及ぼすようです。テキストと画像をバランスよく組み合わせて使いましょう。

期待通りの要約を表示させるには事前のテストが大切です。Geminiがメールの内容をどのように要約するかを確認し、いろいろなコンテンツのパターンを試してみましょう。AIによる要約をテストできるInbox Monsterのようなツールを使うと便利です。このツールはGeminiとApple Intelligenceの両方に対応しています。

Inbox Monsterによる検証

最後に、3種類のプロモーションメールをInbox Monsterでテストした結果を紹介します。メールの内容はどれも同じですが、以下のようにデザインが異なります。

  1. テキストもalt属性もない1つの大きな画像のみで構成したメール
  2. 1と同じ画像にalt属性を追加したメール
  3. 画像・alt属性・本文のテキストをバランスよく組み合わせたメール

それでは結果を見てみましょう。以下がテスト用のコンテンツです。

テスト用コンテンツ

  1. テキストもalt属性もない1つの大きな画像のみで構成したメール
    テスト結果1

    「InboxMonsterはメールとSMSの到達性向上のツールを宣伝しています。クリエイティブプロジェクトのプレビュー機能やプログラム管理の機能もあります。」

  2. 1と同じ画像にalt属性を追加したメール
    テスト結果2

    「InboxMonsterはSMSの到達性向上、クリエイティブプロジェクト、プログラム管理のツールを紹介しています。これらのツールはメールやSMSによるマーケティングの支援を目的としています。」

  3. 画像・alt属性・本文のテキストをバランスよく組み合わせたメール
    テスト結果3

    ※「2」と同文

今回のテストケースでは、それほど大きな違いは見られませんでした。同様の検証をApple Intelligenceで行った際には、画像のみのメールと、テキストを組み合わせたメールとで要約の精度に大きな違いが見られました。AIツールによって、メールの構成要素の影響度が異なるのは興味深い発見でした。

十分なテストとは言えませんが、今回の結果から、Geminiは画像内の文字を読み取っている可能性があります。とはいえ、大きな画像1枚だけのメールを送るべきではなく、画像とalt属性、本文のテキストを適切に組み合わせたメールを送るのがよいでしょう。

自分でもテストしてみたくなりましたか?Gemini in Gmailのテストにはもちろん、それ以外の目的でもInbox Monsterの利用を強くお勧めします。Inbox Monsterは、デザインの見え方の確認、受信トレイへの到達性テスト、ブラックリストやレピュテーションの監視、スパムトラップの検出、DMARCレポートの管理など、メール配信に関わるあらゆるツールを提供しています。

この記事では、Gemini in Gmailについて紹介しました。Geminiによるメールの検索や要約の機能はまだまだ未知数ですが、受信者の行動にも影響を与える可能性があります。届けたいメッセージが受信者に伝わるように、しっかりテストを行いましょう。

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