固定IPアドレスの追加は何のため?

Snowshoe

この記事は Adding a New IP Address: Is It a Good Idea? の抄訳です。

メールが届かないといった配信トラブルに対処している時、「新しいIPアドレスを取得すれば解決しますか?」という質問をよく受けます。新しいIPアドレスを使用するということは、真新しい状態からやり直すことを意味するので手っ取り早く感じられるかもしれません。

しかし、問題の本質を改善するための対処でない限り、解決しないというだけでなく、同様の問題が発生し続けるというリスクがあります。

IPアドレスを追加すべきでない理由

最近のISPは、IPレピュテーションだけではなく、送信者がどのような振る舞いをしているか、というところまで細かくチェックしています。送信者が多数のIPアドレスから送信を試みており、かつそれがレピュテーションの低さをごまかすためであると思われる場合、スノーシュースパムの送信者であるとみなされます。

スノーシュー(=雪の上を歩くための雪上歩行具のひとつ。かんじき。)が体重を分散させて雪に沈むのを防ぐのをイメージして命名された送信手法で、沢山のIPアドレスを使用することで、悪評を分散させることを意味しています。
参考:スノーシュースパムと戦う「HuMachine」インテリジェンス (カスペルスキー社ブログ記事)

レピュテーションが低いときの解決方法としてIPアドレスを追加するという手段を取ってはいけません。

例えば、

  • 受信トレイへの到達率が低い
  • IPアドレスがブラックリストに掲載されている
  • Deferred(遅延)やBlocks(ブロック)が多発している
  • 迷惑メール報告(苦情)が多く発生している

ということが起きている場合、IPアドレスを追加したところで問題の解決には至りません。

オプトインが取れている宛先にしか送らない、関連のある内容しか送らない、ということを続け、一切開封しない宛先には送信をやめるということが必要になります。別のIPアドレスに切り替えたり、追加したりすることは問題の解決につながらないだけでなく、スノーシュースパムの送信者であるとみなされるリスクがあります。新しいIPアドレスを使っただけで、望まれるメールになるわけではありませんし、迷惑メール報告がなくなるわけでもありません。

レピュテーションが低いことによりメールが届かない場合、解決するのに一番良い方法はしばらくの間、問題が発生しているISPへの送信量を減らすことです。そして送る対象をエンゲージメントが高い購読者に絞るのです。
例えば、レピュテーションを回復させるために、過去2週間に開封やクリックをした購読者にだけメールを送ります。そしてしばらくしたらエンゲージメントの低い購読者にも送信を開始します。もちろんモニタリングを続け、レピュテーションに悪影響が出ているようでしたら、送信対象を再度見直しましょう。

Sunset Policyを運用するというのも非常に有効です。エンゲージしていない購読者を送信対象から外すことで将来的な問題発生を防ぐことが可能です。SendGridでは6ヶ月の間一切開封、クリックをしていない宛先への送信はやめることをおすすめしています。

どんなときにIPアドレスの追加が必要になるのか

では追加のIPアドレスが必要になるのはどういうときでしょうか。

それは、送信したい通数がISPが設けている制限を超えてしまっているときです。各ISPでは1つのIPアドレスから送信可能な時間あたりの通数や頻度(送信レート)を定めています。「コネクションが多すぎます(too many connections)」、「時間あたりの送信通数が多すぎます(too much mail this hour/day)」といったエラーでDeferredやBlocksが発生している場合や、特定のISPにのみメールが到達するまでの時間が長くかかるといった場合には、IPアドレスの追加が問題の解決策になります。

また、送信するメールをセグメント化する際にもIPアドレスの追加が有効です。例えばトランザクションメールの送信はあるIPアドレスから、マーケティングメールの送信は別のIPアドレスから、といった具合にメールの種類によって使用するIPアドレスを分けます。こうすることでマーケティングメールの送信でトラブルがあった場合でも、より重要なメールであるトランザクションメールへの影響は最小限に抑えることが可能です。

まとめ

メール送信に関して問題が発生した際、重要なのはその場しのぎの方法で対処するのではなく、根本的な原因に対処することです。根本原因を除去することは長期的な成功をおさめるためには避けて通ることはできません。IPアドレス=レピュテーションというわけではなく、送信者としての振る舞い全てがレピュテーションに深く結びついているのです。

送信通数やレートに起因する問題である場合は、IPアドレスの追加は非常に有効な対処法です。しかし、送ったメールに対する受信者の反応に起因する場合は、IPアドレスを追加するのではなく、メールアドレスの収集方法、送信頻度を見直し、購読者が読みたくなるようなメールコンテンツにするよう改善をする必要があるのです。

参考記事
トランザクションメールとマーケティングメールの違いとは?
Gmailのタブと戦うのはもうやめましょう
IPレピュテーション vs. ドメインレピュテーション【入門】