専門家が解説!迷惑メール判定の舞台裏

専門家が解説!迷惑メール判定の舞台裏

この記事は Ask the Expert: Sridhar Chandran, Senior Deliverability Consultant の抄訳です。

なぜ迷惑メール判定されるのか?送信後のパフォーマンス分析ではどの指標に注目すべきか?これらを正しく理解している人は、実は多くありません。メール配信にまつわる誤解を解き、効果的なメールマーケティングを実現するには、専門家から学ぶことが最適です。

そこで、今回はTwilio SendGridのシニア・コンサルタント、Sridhar Chandran氏にお話を伺いました。 Chandran氏は、AOLでメールサーバ管理者としてキャリアをスタートし、なりすましの排除や正当なメールを受信トレイに届ける業務に取り組んできました。現在は、14年以上に渡る経験をもとに次世代のメールポリシーと配信のベストプラクティスの構築に携わり、送信者と受信者の架け橋となることを目指しています。

それでは本題に移りましょう。

Q&A: 専門家に聞いてみよう

Q: インボックス・プロバイダのフィルタリングについて、マーケターが最も誤解しがちな点は何ですか?

A: 宛先サーバによるフィルタリングの基準についてはかなりの誤解がありますが、代表的なものとして、たった1つの要因でブロックが発生すると思われている点が挙げられます。

マーケターはブラックリストスパムトラップばかり気にする傾向がありますが、それらが単独でブロックの原因になるわけではありません。もちろん、ブラックリストへの掲載やスパムトラップへの送信は宛先の管理方法に問題があることを示していますが、Yahoo!やGmailのようなプロバイダは、これだけでメールをブロックするわけではありません。

ほとんどのインボックス・プロバイダは受信者のエンゲージメントデータと複雑な機械学習をもとにフィルターを構築・活用し、メールを振り分けています。そのため、配信で生じるトラブルの原因はインボックス・プロバイダによって異なるうえに、多岐にわたる場合が多いのです。

インボックス・プロバイダのフィルタリングについて、マーケターが最も誤解しがちな点は何ですか?

Q: Apple社のメールプライバシー保護機能の登場により、マーケターはネガティブな指標に着目しなければならなくなりました。インボックス・プロバイダの観点から、これは具体的に何を意味するのでしょうか?

A: Apple社のメールプライバシー保護機能が登場するまで、開封率は長きに渡ってメールマーケティングの主要なKPIでした。しかし、ほとんどのインボックス・プロバイダは常に開封率よりも「迷惑メール報告」や「迷惑メール解除」を重要視してきました。

なぜなら、これらの指標は受信者からの直接的なフィードバックであり、レピュテーションに最も影響を与えるからです。

すべてのインボックス・プロバイダの利用規約には、迷惑メール報告といった顧客からのフィードバックをメールの振り分けに使用する旨が記載されています。外部のブラックリストや送信通数などの情報をもとにフィルタリングする場合もありますが、受信者からの直接的なアクションは特に重要視されます。そのため、迷惑メール報告率こそ着目すべきネガティブ指標といえます。

Q: 一般的に迷惑メール報告率は0.08%以下に抑えることが望ましいといわれていますが、インボックス・プロバイダによってその値は異なりますか?

A: この議論の前に、インボックス・プロバイダとメール配信サービスでは迷惑メール報告率の計算方法が異なることを理解しておく必要があります。インボックス・プロバイダはメール配信サービスと比較して、より多くの、より正確な情報を収集しているため、計算に利用できるデータに差があります。具体的に見ていきましょう。

メール配信サービスは到達率を元に迷惑メール報告率を計算しますが、インボックス・プロバイダは、到達したメールのうち受信トレイに振り分けられたメールの数と迷惑メール報告数の比率から割り出しています。

メール配信サービスは、受信トレイにメールが届いたかどうかは検出不可能であるのに加え、迷惑メール報告率を精密に計算できません。なぜなら、すべてのインボックス・プロバイダがフィードバックループを提供しているわけではなく、提供されたとしてもそれが完全なデータとは限らないからです。

さらに、インボックス・プロバイダは静的な値を基準にレピュテーションを算出しているわけではありません。例えば、トランザクションメールは一斉配信メールと比べ迷惑メール報告数が少ないため、基準値を設けることはあまり意味をなさないのです。

迷惑メール報告率を監視するベストな方法は、過去の配信ボリュームやレピュテーション、エンゲージメントデータをもとにしたベンチマークを設定し、独自の基準値を作ることです。メール配信サービスでも迷惑メール報告率を確認することはできますが、上述のとおりこれは完全なデータではありません。あくまでガイドラインと位置づけましょう。

Q: メールの本文や件名、URLなどのコンテンツは迷惑メール判定にどれぐらい影響しますか?

A: メールのコンテンツ、特にURLとドメインはフィルタリングに大きな影響を与えます。無料のメールプロバイダから送信されるスパムが増えたため、送信元IPアドレスやドメインのレピュテーションだけでなく、コンテンツで判定することが必要になってきています。

その結果、以前から行われているメールの署名やハッシュ化による有害なコンテンツの特定に加え、URLとドメインも検証するようにもなりました。

例えば、特定のURLやドメインに苦情が殺到した場合、ISPはそのドメインからのメールをブロックしたり、迷惑メールフォルダに振り分けたりする可能性が高まります。そのドメインを含むURLがメールのコンテンツに含まれている場合も同様です。

一方で、近年はリンク先のURLをわざと複雑にしてフィルタをかいくぐる手口をとるスパマーも出てきました。URLをコード化して長くしたりIPアドレスを使ったURLに16進数を含ませたりすることで、有害なURLとの一致を回避する仕組みです。こうした新しい手口に対応するために、メールフィルタは日々進化しています。マーケターもその進化に合わせ、コンテンツに注意をはらい、迷惑メール判定への対策を続ける必要があります。

メールの本文や件名、URLなどのコンテンツは迷惑メール判定にどれぐらい影響しますか?

Q: ブランドの認知度はメールの到達性に影響しますか?

A:ブランディングは最終的にメールの到達性において重要な役割を果たします。Fromアドレス、Return-PathReverse DNSDKIMのd=domainに設定するドメインを統一することで、フィルタがメールを適切に振り分けられるようになり、レピュテーションの確立がより迅速になります。

ブランドを識別させるには、ウェブサイトやメール送信元のドメイン/IPアドレスのWhoisレコードといった明確な情報が必要です。近年多く見られる「いとこドメイン」への攻撃を防ぎ、ブランドへのダメージを軽減するには、認証設定を正しく行いましょう。

Q: メールサーバの管理者からコンサルタントに転身後、メール到達性のアプローチにおける最も大きな変化は何ですか?

A: メールサーバ管理者のゴールは、正当なメールを受信トレイへ確実に届けると同時に、サービス利用者を悪意のあるメールから守ることです。

しかし、受信サーバには、オンプレミスの複雑なシステムや大手のメール配信サービスなど、あらゆる送信者からのメールが届きます。そのため、不適切にコーディングされたソフトウェアやゾンビネットワークなど、様々なものに対処しなければなりません。こうした技術的な処理を肩代わりしてくれるメール配信サービスに勤めてからは、メールマーケティングの細かい業務に集中できるようになりました。

とはいえ、スパマーはセキュリティをかいくぐろうとします。我々メール配信のコンサルタントの仕事は、マーケターを啓蒙しスパマーと間違われないように教育することです。その意味では役割にあまり大きな変化はなく、引き続き受信サーバの視点でメールの到達性を見守っていきます。

おわりに

今回はChandran氏にメール配信の舞台裏を語ってもらいました。ますます巧妙化するスパマーの手口にインボックス・プロバイダは日々対応しています。メールマーケティングの成功には、迷惑メール判定される仕組みや到達性に与える影響など、知識のアップデートが欠かせません。今回のブログがその助けになれば幸いです。

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