SMTPリレーサービス入門

SMTPリレーサービス入門

この記事は SMTP Relay Service: What Is SMTP Relay and How Does It Work? の抄訳です。

企業と顧客のコミュニケーションにおいて、メールは重要です。ニュースレターや注文確認、パスワードリセットなど、どのようなメールでも、確実に届けられるかどうかが顧客との関係性を左右します。
では、届くメールと届かないメールにはどのような差があるのでしょうか。

そのカギを握るのが「SMTPリレーサービス」です。

この記事では、SMTPリレーサービスとは何か、どのような意義があるのか、トラブルに直面したときにどうすれば良いかなどをご紹介します。

SMTPとは?

「SMTP」は Simple Mail Transfer Protocol の略で、世界中のほとんどのメール配信サービスで使用されているプロトコルです。メール配信サービスでメールを送信するときには、設定されたサーバに接続し、SMTPで通信します。サーバとの通信ができてはじめてメールが送信できるようになります。

わかりやすく郵便になぞらえると、サーバは郵便局に例えることができます。手紙を送るには、封筒に宛先と差出人を記載します。地元の郵便局は、宛先に一番近い郵便局を調べ、そこに手紙を送ります。
メールの場合も同じで、送信には宛先と差出人情報(送信元のメールアドレス、IPアドレス、タイムスタンプなど)が必要です。これらの情報がないと、ローカルサーバは受信者側のサーバにメールを送ることができません。

SMTPとは?

SMTPメールリレーとは?

SMTPメールリレーとは、メールをあるサーバから別のサーバへ転送することです。例えば、会社Aの人が会社Bの人にメールを送る場合、メールはまず会社AのSMTPサーバに送られ、その後会社Bのサーバに転送されます。このように、特定のサーバが別のサーバからメールを受け取ることを「リレー」と呼びます。

一方、同一ドメイン間でメールを送受信する場合、他のサーバは関与しないので「リレー」とは言いません。これは、同じ町内にいる人に手紙を送るのに似ています。手紙を受け付けた郵便局は、他の郵便局には送らずに直接宛先に配達するでしょう。

パブリックSMTPリレーサーバとは?

SMTPリレーをするサーバの1つに、無料で利用できる「パブリックSMTPリレーサーバ」というものがあります。これらの多くは、迷惑メール対策として1日あたりのSMTPリレー数に上限を設けており、無料で使用できる反面、大量配信はできません。
大量配信をする場合は、専用のSMTPリレーサービスを利用する必要があります。

SMTP認証とは?

SMTP認証(SMTP AUTH)とは、メール送信者がSMTPサーバにアクセスする際に認証を行う、SMTPの拡張機能です。SMTP認証が導入されたSMTPリレーでは、メールを中継する前に送信者の認証情報を確認し、第三者によるアクセスを防いでいます。

一方、インターネット上の誰もが利用可能な「オープンメールリレー」にはこのような仕組みがないため、悪用されやすいのが現状です。SMTP認証は、迷惑メール送信者からサーバを保護すると同時に、信頼できるユーザが安全にメールを送受信するための機能です。

SMTPサーバアドレスとは?

SMTPサーバアドレスとは、送信メールを中継するSMTPサーバのホスト名やIPアドレスを示す情報です。メールクライアントやアプリケーションからメールを送信する際には、SMTPサーバアドレスを設定する必要があります。

SMTPサーバアドレスについて知っておくべきことは以下の通りです。

  • フォーマット:一般に、smtp.domain.comまたはmail.domain.comのようなフォーマットで表現されます。
  • どこで確認できるか:メールサービスプロバイダが公開しています。メールクライアントの設定画面やプロバイダのマニュアルを確認しましょう。
  • SMTPサーバアドレスの例:一般的なメールサービスプロバイダの例は以下のとおりです。
    • Gmail:smtp.gmail.com
    • Outlook / Hotmail:smtp-mail.outlook.com
    • Yahoo!メール:smtp.mail.yahoo.co.jp
  • ポート番号:通常、SMTPサーバアドレスは特定のポート番号と対応しています。一般的なポートは以下のとおりです。
    • 25:標準的なポート(個人向けISPからはブロックされることが多い)
    • 465:SMTPS(SSL暗号付きSMTP)
    • 587(推奨):STARTTLS(TLS暗号付きSMTP)
  • セキュリティへの考慮:SSLもしくはTLSを使用して通信を必ず保護してください。機密情報を送信する際には特に重要です。

SMTPリレーサービスとは?

SMTPリレーサービスとは、信頼できる第三者機関を経由してメールを配信するサービスのことで、一括メール配信やトランザクションメールの送信に特化したものが一般的です。

なぜこのようなサービスが必要なのでしょうか。

まず、SMTPリレーサービスを導入することで、SMTPサーバを自分で管理する必要がなくなります。

2つ目の理由として、Gmailなどの一般的なWebメールは一対一のやり取りを前提としているため、大量送信には向きません。ニュースレターや通知メールを多く送るようなビジネスでは、メール送信に特化したSMTPリレーサーバが必要となります。

SMTPリレーサービスの意義とは?

個人やビジネスで個別に送信するメールの場合、通常はメールの内容が1通1通異なり、宛先の数も限られています。そのため、迷惑メールと誤判定されることは少なく、それほど複雑ではありません。

しかし、何万もの宛先にニュースレターを送信する場合や、ユーザのアクションに対してメールを送信するようなWebアプリを使っている場合はどうでしょうか?
これらのメールは内容が似通っており、迷惑メールと誤判定されてしまうことも少なくありません。SendGridをはじめとしたSMTPリレーサービスは、こうした問題に対処できます。

普段使っているメールサーバを大量配信に利用すると、到達率は下がり、帯域は圧迫され、無関係なメールの送受信も遅延させてしまいます。メールが迷惑メールフォルダに振り分けられないようにサーバを常に監視し対応し続けるのは、コストがかかる上にとても困難です。ビジネスの成長に合わせてメールの量も増えていきます。その度にメールサーバを増強していては、さらに手間もコストもかかってしまいます。

SMTPリレーサービスプロバイダにアウトソーシングすれば、普段のメールのやり取りに悪影響を及ぼすことなく、メールの大量配信や自動配信を行えます。また、SendGridであれば、組織の成長に合わせて柔軟にスケールを変更できます。

トラブルシューティング

SMTPリレーサービスを使用するとメール配信を効率化できますが、使用しない場合と同様、問題に直面する可能性はあります。ここでは、最も一般的な問題に対処するヒントをご紹介します。

送信元IPアドレスがブラックリストに登録されてしまった

スパムメールをブロックするため、ISPはメールの受信時にブラックリストを参照します。送信元IPアドレスがブラックリストに登録されると、メール配信に大きな影響が及びます。ブラックリストに登録されないための方法は以下の通りです。

  1. 日頃からIPレピュテーションを監視するSenderScoreTalos IntelligenceMXToolboxなどのツールを使って、IPレピュテーション(送信元IPアドレスの信頼度)をチェックしましょう。これらのツールを利用すると、IPアドレスがブラックリストに登録された時にアラートを受け取ることができます。
  2. IPウォームアップをする:新しいIPアドレスからメールを送るときは、少ない通数から始め、徐々に増やしていきましょう。そうすることで、IPレピュテーションを高めることができます。
  3. メール送信のベストプラクティスに従う:スパムコンテンツを避け、宛先リストの質を下げないようリストクリーニングをし、ダブルオプトイン方式を採用しましょう。
  4. ブラックリストの登録解除申請をする:IPアドレスがブラックリストに登録されてしまった場合は、ブラックリストの管理団体に連絡し、登録解除を要請しましょう。その際、登録の原因となった問題をどのように改善したかを説明する必要があります。

バウンス率が急上昇した

無効なメールアドレス、宛先サーバの障害、ISPからの厳しいフィルタリングなどにより、バウンス率が急上昇することがあります。その対処方法は以下の通りです。

  • メールアドレスを検証する:宛先リストにメールアドレスを追加する前に、検証サービスを用いてメールアドレスの有効性を確認しましょう。
  • 宛先リストを整理する:一定期間メールに反応していない非アクティブな購読者を、定期的にリストから削除しましょう。
  • メールの内容と頻度を見直す:受信者のメール疲れを避けるため、内容や送信頻度が適切であるよう心掛けましょう。メールの内容については、mail-testerMailGeniusなどのツールで問題がないかチェックできます。
  • バウンスメッセージを分析する:宛先サーバから返されるバウンスメッセージは、メールが届かない原因を探る手がかりになります。

メールが遅延する

ネットワークの問題、サーバの過負荷、設定エラーなどにより、メールが遅延することがあります。その際は、以下を確認しましょう。

  • サーバの負荷を確認する:SMTPサーバが送信リクエストで過負荷になっていないか確認してください。持続的に遅延が発生する場合は、サーバリソースの拡張を検討しましょう。
  • メールサイズを最適化する:高解像度の画像や添付ファイルを含むメールは、配信速度を遅らせる可能性があります。
  • 設定を見直す:SMTPサーバの設定が適切でないと、遅延が発生することがあります。タイムアウト時間やリトライの間隔、最大メッセージサイズなどの設定を見直しましょう。
  • SMTPサービスプロバイダに問い合わせる:上記を見直しても問題が解決しない場合は、SMTPリレーサービスプロバイダに問い合わせましょう。ネットワークの潜在的な問題や、すぐにはわからない設定エラーについて教えてくれるでしょう。

SMTPメールリレーに関するよくある質問

SMTPリレーサービスはどのようにメール到達性を向上させるのですか?

IPレピュテーションの管理や、送信者認証(SPF, DKIM, DMARCなど)の設定、フィードバックループやバウンスの処理などを支援する機能を提供することで、到達性の向上を図っています。

パブリックSMTPリレーサーバとプライベートSMTPリレーサーバの違いは何ですか?

既に述べたとおり、パブリックSMTPリレーサーバは無料で使用できる一方、通数制限があり安全性も高くありません。プライベートSMTPリレーサーバは、有料ですが大量送信が可能で、セキュリティや到達性を高く維持できます。

SMTPリレーとSMTP認証は同じですか?

いいえ、違います。SMTPリレーは、あるサーバから別のサーバへメールを転送するプロセスを指します。一方、SMTP認証は、SMTPサーバの不正利用を防ぐために、送信者の認証情報(ユーザ名やパスワードなど)を検証する際に使用されるプロトコルです。

SMTPリレーサービスはどのような観点で選択したらいいですか?

送信通数や予算、必要な機能、提供されるサポートのレベル、セキュリティ基準への準拠などを踏まえて、自社の要件に合ったサービスを選びましょう。

Twilio SendGridのSMTPリレーサービス

Twilio SendGridのSMTPリレーサービスは高いスケーラビリティを誇ります。ハードウェアやソフトウェアにコストをかけることなくビジネスニーズに合わせて送信通数を増やすことができ、さらに、お客様の活動を支援するためのセキュアな機能も充実しています。

Web APIであれば他システムとの連携が容易で、そのためのライブラリコードサンプルも用意されているほか、弊社では日本語でのサポートも提供しています。

SMTPサーバの導入に関してお悩みの方は、無料アカウントを作成のうえ、ぜひTwilio SendGridをお試しください。

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