概要
SEQ(SendGrid Engagement Quality)はメール送信の質を表す数値指標です。SEQを活用し、メール送信の質を改善することで、受信トレイへの到達率向上が期待できます。SEQ APIには親アカウントのSEQを取得するAPI、サブユーザのSEQを取得するAPIの2種類があります。
- SEQ APIはFreeプランを含む全てのプランで利用可能です。
- Open Trackingが無効、または過去30日間の送信が1,000通に満たない場合、SEQのスコアは算出できません。
- スコアはアカウント(親アカウント/サブユーザ)ごとに算出されます。
- スコアの算出方法の詳細は非公開です。
SEQとは
SEQ(SendGrid Engagement Quality)はアカウントのメール送信の質を把握するためにSendGridが独自に算出する数値指標です。具体的には、以下の5つのカテゴリで評価を行います。
- エンゲージメントの新しさ(Engagement recency)
- 開封率の高さ(Unique open rates)
- バウンス率の低さ(Bounce rates)
- バウンスの分類(Bounce classification)
- 迷惑メール報告率の低さ(Spam rate)
各カテゴリのスコアは1から5の値をとり、大きいほど良好であることを表します。各カテゴリはいずれもメールの到達率と密接に関わっており、SEQが高いほど受信トレイに届きやすいと言えます。これら5つが総合的に評価されて、SEQの全体スコアが決まります。
例えば、SEQの全体スコアが4で、各カテゴリのスコアが以下のようになっていたとします。
- エンゲージメントの新しさ:4
- 開封率の高さ:5
- バウンス率の低さ:5
- バウンスの分類:5
- 迷惑メール報告率の低さ:5
この場合、「エンゲージメントの新しさ」が一番低いので、この項目を改善すべきだとわかります。各カテゴリの具体的な改善方法は次のセクションで説明します。スコアは高い方が望ましいですが、全て5でないといけないわけではありません。
5つのカテゴリ
エンゲージメントの新しさ(Engagement recency)
エンゲージメントは、インボックス・プロバイダがメールの質を判断する重要な指標です。受信者がメールを開封したり本文内のリンクをクリックしたりするとエンゲージメントは上がりますが、開封しなかったりスパムとしてマークしたりすると下がります。
「エンゲージメントの新しさ」は、過去30日間に送信した宛先のうち、過去90日間にエンゲージメントがあった(過去のいずれかのメールを開封もしくはクリックした)宛先の割合をもとに算出されます。このスコアが高い場合、受信者に「望まれる」メールを送っていることを示し、低い場合、長らく反応がない多くの宛先にメールを送り続けていることを示します。
※算出にはOpen Trackingを利用しています。Appleによる機械的な開封は除いています。
改善方法
Sunset Policy
エンゲージしていない宛先を送信リストから取り除くための「Sunset Policy」を作成しましょう。これは、一定期間エンゲージしていない受信者に送るメールの数を減らす(または完全にリストから削除する)戦略です。
Sunset Policyは段階的に適用することを推奨します。例えば、1ヶ月間エンゲージがなかったら送信頻度を減らし、3ヶ月後にさらに頻度を減らし、6ヶ月後に再エンゲージメントキャンペーン(受信の継続を希望するか確認するメール)を送信するといったやり方です。再エンゲージメントキャンペーンにも反応がない宛先は、リストから削除しましょう。望まれる宛先にのみメールを送信することで、宛先のインボックス・プロバイダに良い印象を与えることができます。
オプトイン
オプトインの方法を見直しましょう。メールの種類ごとにオプトインを取る、送信頻度を明示する、または受信者に頻度を選択してもらう等の方法が有効です。
開封率の高さ(Unique open rate)
開封率は、メールが配信された宛先のうち、開封した受信者の割合です。このスコアは、宛先として多く指定している上位5つのインボックス・プロバイダにおける開封率(過去7日分と30日分)から算出されます。Appleによる機械的な開封や、ブロックやバウンスのように不達となった通数は除外して計算されます。
改善方法
宛先の見極め
Sunset Policy等を活用して、エンゲージメントしていない宛先にはメール配信をやめるようにしましょう。また、インボックス・プロバイダごとの統計にも着目すると良いでしょう。ある1つのインボックス・プロバイダでのみ開封率が低い場合、そのドメインに対するメールの送信量を減らし、直近でエンゲージした受信者のみをターゲットに絞ることで開封率の向上が見込めます。
A/Bテスト
メールの内容や送信頻度を変更する際はA/Bテストを実施し、開封率やコンバージョンの高さ等ポジティブな反応を見極めましょう。開封率やクリック率を監視するにはSendGridのStats機能が便利です。
送信環境の分離
インボックス・プロバイダはトランザクションメールとマーケティングメールにそれぞれ異なる評価を与えるため、これらを同じアカウントから送信している場合はアカウントを分けることを推奨します。これにはサブユーザ機能が便利です。
バウンス率の低さ(Bounce rate)
バウンスとはメールの不達を指します。このスコアは、過去7日間と30日間に送信を試みたメールの総数に対するバウンス率から算出します。ここではハードバウンス(恒久的なバウンス)のみが考慮されます。一般的にバウンス率が高い場合は宛先メールアドレスの収集方法に問題がある可能性があります。例えば、メールアドレスのバリデーションやサービスの登録フォームに問題があるかもしれません。
改善方法
第一に、宛先リストクリーニングを行って、無効なメールアドレスへの送信をやめましょう。第二に、ダブルオプトインをとることで、確実に有効なメールアドレスに送信するようにしましょう。最後に、Sunset Policyを適用しましょう。初めは有効だったメールアドレスでも、長期間使用されずに無効となる場合があります。Sunset Policyを適用すれば、無効なメールアドレスがバウンスを発生させる前に、宛先リストから削除することができます。
バウンスの分類(Bounce classification)
SendGridではインボックス・プロバイダから返却されるレスポンスを元に、バウンスの原因を7つのカテゴリに分類しています。このスコアは、”Reputation”(送信者のレピュテーション)と”Content”(メールのコンテンツ)が原因のバウンスから算出されます。これらのバウンスは、受信者から多くのネガティブな反応があったことを示しています。
改善方法
他のカテゴリの改善を行うことで、このスコアも改善します。受信者に望まれるメールをタイムリーに送信できているか確認しましょう。
- Sunset Policyを適用する
- 宛先メールアドレスの有効性を確認する
- 関連性の薄いメールの送信を避ける
- A/Bテストをしてコンテンツを見直す
また、IPアドレスや送信ドメインがブロックリストに掲載されていないかの確認や、どのインボックス・プロバイダが受信拒否しているかの特定も行いましょう。発生した個々のバウンスがどの分類に該当するかを知るには、Event Webhookを利用し、Bounceイベントのパラメータを確認してください。
迷惑メール報告率の低さ(Spam rate)
受信者は、そのメールが届く理由がわからなかったり、受け取ったメールに不満を感じたりすると迷惑メール報告を行います。このカテゴリのスコアは、直近7日間のデータを元に算出されます。
改善方法
このスコアが低い場合も、受信者に望まれるメールをタイムリーに送信できているか確認しましょう。
- 明示的にオプトインを取った宛先に送信して、送信者のブランドや送信の意図をしっかり理解してもらいましょう
- オプトインの際に送信頻度を明示したり、送信頻度を選択できるようにすることを検討してください
応用
SEQは、メール送信の質の把握や改善すべきポイントの理解に役立つ他、多数のサブユーザによる大規模な送信トラフィックの管理・監視にも活用できます。
IPアドレス割り当ての管理
日々の送信傾向とレピュテーションを基にサブユーザをグループ分けして、各グループにIPアドレスを割り当てるのがベストプラクティスです。サブユーザのSEQのスコアをこのグループ分けに活用することができます。
エンドユーザの送信の監視
サービスのエンドユーザごとにサブユーザを割り当てて送信している場合、SEQのスコアを把握することで、メール送信の質が低いエンドユーザを迅速に特定でき、さらにその改善のための提案にも活用できます。